戸建ては本当に価値ゼロになるのか?

戸建ては本当に価値ゼロになるのか? 不動産オーナー学
不動産オーナー学

「戸建ては築20年で価値ゼロになる」といった話を耳にしたことがあるかもしれません。しかし、それは本当に正しいのでしょうか?本記事では、築年数経過による戸建ての資産価値の変化と、実際の不動産市場での評価について詳しく解説します。

1. 戸建ての資産価値は「土地+建物」

よく見る「築年数とともに価値がゼロになる」というデータの多くは、建物のみ を対象にしています。実際の戸建ての資産価値は、「土地+建物」で決まるため、土地の価値が残る限り、資産価値がゼロになることはありません。

たとえば、以下のような考え方があります。

中古戸建ての価格 = 土地価格 + 新築価格 ×(1 - 経過年数 ÷ 30年)

この計算式からも分かるように、築年数が経過しても土地価格は変わらず、建物の価値が徐々に減少していく という考え方が一般的です。

プロ目線から見た注意点

不動産の評価方法には、「取引事例比較法」や「原価法」 などがあります。市場での売買価格は、実際に取引された類似物件の価格を参考に決定されるため、築年数が経過していても適正な価格で取引されるケースが多いです。

ただし、土地の価値が低いエリアでは、築30年を超えた戸建てが実質的に「土地値(とちね)査定」になる こともあります。これは、古い建物が市場価値を持たず、土地のみが評価される状態を指します。このため、戸建ての資産価値を考える際は、「土地の価値」が重要な判断基準となります。

2. 建物の価値がゼロになるのは築30~35年?

「木造住宅は法定耐用年数が22年だから、築20年で価値ゼロになる」というのは誤解です。実際の不動産査定では、築30~35年程度で建物価格がゼロになる という考え方が主流になっています。

現在では築20年時点で建物価格をゼロ円とするような査定はほとんどなく、実際の中古市場でも、築20年以上の戸建てが売買されています。

【参考データ】築年数による建物価値の変化

  • 築10年 :新築価格の約70~80%
  • 築20年 :新築価格の約40~50%
  • 築30年 :新築価格の約10~20%
  • 築35年以降 :建物価値ゼロに近づくが、土地価格は維持

プロ目線から見た評価のポイント

一方で、築古の戸建てでも、リノベーションや耐震補強が施された場合は、建物自体の価値が維持されることもあります。たとえば、耐震性のある住宅や、リフォーム済みの物件は市場での需要が高く、築年数だけで判断すると見誤るケースもあります。

3. 「土地建物比率」が資産価値を左右する

戸建ての資産価値を考える上で、特に重要なのが「土地建物比率」です。土地の割合が高いほど、築年数が経過しても資産価値が維持されやすい という特徴があります。

【エリア別の土地建物比率】

  • 首都圏:土地40%・建物60%
  • 地方:土地30%・建物70%
  • 東京都内(例:品川区):土地70%・建物30%

たとえば、土地5000万円・建物2500万円(比率7:3)の戸建て と、土地1500万円・建物2500万円(比率4:6)の戸建て では、30年後の下落率が大きく異なります。土地の割合が高い都心の戸建ては、築年数が経過しても価値が大きく下がりにくいのです。

4. 戸建てとマンションの資産価値の違い

「マンションの方が資産価値が高い」と思われがちですが、築年数経過による価格下落率はマンションの方が高い というデータもあります。

【築年数経過による価格下落率(23区内)】

  • 戸建て(品川区) :築14年で約15.8%減少
  • マンション(品川区) :築14年で約27.1%減少

また、マンションは管理費や修繕積立金の影響を受けるため、長期的な維持コストが高くなる可能性も考慮すべきポイントです。

5. 結論:「戸建ては価値ゼロにならない」

以上のデータを踏まえると、

築20年で戸建ての価値がゼロになることはない築30~35年で建物価格がゼロになるが、土地の価値は残る土地建物比率が高い都心の戸建ては、資産価値を維持しやすいマンションの方が築年数経過による下落率が大きいケースもあるリノベーションや耐震補強によって築古の戸建ても市場価値を維持できる可能性がある

「築20年の戸建ては価値ゼロだから買うべきでない」という単純な考え方は間違いです。むしろ、土地の価値が高いエリアの戸建てを購入すれば、長期的に資産価値を維持しやすい ということが分かります。

不動産の価値は「築年数」だけでなく、立地・市場の需要・管理状況・リフォーム履歴 なども考慮して総合的に判断することが重要です。

【参考記事】

あなたの住宅購入の判断材料になれば幸いです!

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